【夏の贅沢一人旅】
夏の太陽がまぶしく輝く季節。都会の喧騒を離れ、贅沢なひとときを求めて、一人伊豆へと向かった。せっかくの旅だからと、車を用意し、青く広がる海を眺めながらのドライブを楽しむことにした。伊豆・熱川高原のヒルトップへと続く道を走るにつれ、視界いっぱいに広がる太平洋と伊豆諸島の景色が、旅の期待を一層高めてくれた。
ホテルに到着すると、まず目に飛び込んできたのは、洗練されたシンプルな外観と、開放感あふれるオーシャンビュー。ロビーに足を踏み入れた瞬間、目の前にはどこまでも広がる青い海と空。潮風が心地よく吹き抜け、まるで別世界に来たかのような感覚に包まれた。
今回の宿泊は、温泉露天風呂付きのスモールプレミアリゾートの部屋。広い窓からは太平洋を一望でき、波の音が静かに響いている。部屋には、ガラスポッドにセットされた紅茶が用意されており、その香りが夏の空気に優しく溶け込んでいた。ゆったりとソファに腰掛け、窓の外の青さに心を奪われる。これから始まるひとりの時間に、胸が高鳴った。
【新鮮な海の幸】
夕食は、「Dining WAVE」のフレンチコースと「旬海割烹 Coastline」の割烹コースから選択できた。どちらも魅力的で悩んだが、今回は和食を選ぶことに。カウンター席に座り、職人の手仕事を間近に感じながら、一品ずつ丁寧に味わっていく。
目の前に並ぶ美しい料理の数々。それはまるで、季節を映し出す一枚の絵巻のよう。私は静かに箸をとり、最初のひと皿へと手を伸ばす。
金色のプレートにそっと並べられた前菜たち。海老のジュレがけは、ひんやりとした舌触りとともに、海の恵みを優しく伝えてくる。柚子がふわりと香る和え物は、繊細な味わいの中に微かな苦みを忍ばせ、黒豆の煮物はほのかな甘みとともに舌の上でほどける。ひとつひとつが異なる表情を持ちながらも、静かに調和し、食事の始まりを優雅に彩る。
次に迎えたのは、青い器に盛られた酢の物。透き通るような薄切りの魚と、瑞々しい野菜が寄り添い、涼やかな酸味が口の中をすっと通り抜ける。まるで、清流のせせらぎを感じるような一皿だ。
そして、お造りへと箸を進める。赤い器に盛られた刺身は、どれも息をのむほど美しい。マグロの深紅、タイの繊細な白、イカの艶やかな光沢、エビの鮮やかな朱。それぞれの魚が持つ個性を引き立てるように、大葉や柑橘がそっと添えられている。ひと口頬張れば、舌の上で魚の旨みがほどけ、わさび醤油がその余韻を引き締める。
温かな香りに誘われ、そっと椀の蓋を開ける。そこには、出汁の香りをたっぷりと含んだ茶碗蒸しが待っていた。とろりとした舌触りとともに、優しい出汁の風味が口いっぱいに広がる。
次に運ばれてきたのは、金目鯛の煮付け。照りのある飴色の煮汁をまとった金目鯛は、箸を入れるとほろりと崩れるほど柔らかい。甘辛い醤油の風味がじんわりと広がり、煮汁をたっぷり吸ったレンコンやゴボウが、その味わいに奥行きを加える。一口ごとに、心がほどけていくような優しさがある。
そして、焼き物へ。黒い皿の上には、塩をまとった鮎が、まるで清流を泳ぐかのように佇んでいる。香ばしく焼き上げられた皮を箸でそっと割ると、ふっくらとした白身が顔を覗かせる。ひと口含むと、鮎のほのかな甘みが広がり、そこに酢橘の爽やかな香りが重なっていく。シンプルながらも、余韻の長い味わいに、思わず目を閉じる。
そして、最後に迎えるのは、炊きたてのご飯と味噌汁。湯気をたたえる白米に箸を伸ばせば、そのふくよかな甘みがじんわりと広がる。味噌汁の深い旨みが、食事の締めくくりを穏やかに包み込む。
こうして、一皿ごとに移りゆく季節の物語を味わい、心まで満たされていく。視覚で楽しみ、舌で感じ、余韻に浸る。まさに、和の心を五感で味わうひとときだった。
伊豆の新鮮な海の幸がふんだんに使われた料理はどれも絶品で、繊細な味わいと美しい盛り付けに心が満たされる。静かに流れる時間の中で、贅沢なひとときを楽しんだ。
【リゾート&スパ】
食後は、本気で楽しみにしていたホテル内の温泉とスパへ。露天風呂には「深湯」があり、125cmの水深が体に心地よい圧を与える。お湯に身を沈めると、まるで浮遊しているかのような感覚に包まれ、非日常の癒しを感じた。目の前には太平洋と伊豆諸島の雄大な景色が広がり、波音と夜風が心を静めてくれる。
スパでは、「星」をテーマにしたÉtoile Spaのエクスペリエンスを体験。エレメンタルハーボロジーの「五行説」との繋がりを大切にした施術は、身体だけでなく心まで浄化されるようだった。自然の摂理に身をゆだね、五感を満たす特別な時間。アロマの香りと柔らかな手技に包まれながら、ゆっくりと旅の疲れが解きほぐされていく。心も体も満たされる、まさに至福のひとときだった。
【夜明けのチェックアウト】
翌朝、朝食をここでとりたい気持ちをぐっと堪え、夜明けとともにチェックアウト。それは、帰りにどうしても寄りたい場所があったからだ。車に乗り込み、目指したのは「大室山」。
リフトで山頂へと上がると、そこには360度の壮大なパノラマが広がっていた。眼下には伊豆の海、そして遠くには夏の澄み切った空気の中、富士山がその姿を現していた。朝日を浴びて黄金色に輝く景色は、言葉を失うほどの美しさだった。この景色を見て、夏の贅沢な一人旅の締めくくりにふさわしい場所だったと確信した。
この旅は、夏の伊豆の美しさと、贅沢な時間を心ゆくまで堪能できるものだった。都会の喧騒から離れ、自分と向き合うひとときを求めている人には、ぜひおすすめしたい。伊豆ホテルリゾート&スパは、そんな願いを叶えてくれる最高の場所だった。